空論上の砂、楼閣上の机。

The Castle of Indolence

グロタンディーク全訳計画

主著一覧

和訳一覧

訳者より

2021 年 8 月現在、日本語で読めるスキーム論に基づいた代数幾何学の文献で、入手しやすいものはハーツホーンと上野とマンフォードだけである。まずハーツホーンは三分冊になっており非常に携帯性が悪く、しかも第一巻はオンデマンド印刷になってしまったので書店にちゃんとセットで並んでいることは珍しくなってしまい、4180 + 2640 + 3520 = 10340 円と非常に高価である。上野も三分冊で刊行され絶版になってしまったが、今では岩波オンデマンドブックスで一冊として 5940 円で購入できる。マンフォードは 2017 年に出版され、今のところは流通も問題なく 6050 円で購入できる。マンフォードはその存在を見たことすらないのでなんともコメントできないが、少なくとも特にハーツホーンは重要な命題を演習問題に流しすぎていて読みにくすぎる。一方で Grothendieck の EGA は演習問題が一個もなく(彼の遺志に反して!)インターネットで無料で読むことができる。他にも Stacks Project などが無料で読めるが、これは本当に百科事典的であるのに対し、EGA はちゃんと読むことができる本である。

I know it's a scary 1800 pages of French, but

  1. It's really easy French. I would describe myself as not knowing any French, but I can read EGA without too much trouble.
  2. It's extremely clear. The proofs are usually very short because the results are very well organized.
  3. It's the canonical reference for algebraic geometry.
I assure you it is not 1800 pages of fluff. I've found it quite rewarding to to familiarize myself with the contents of EGA. Many algebraic geometry students are able to say with confidence "that's one of the exercises in Hartshorne, chapter II, section 4." It's even more empowering to have that kind of command over a text like EGA, which covers much more material with fewer unnecessary hypotheses and with greater clarity.

自信のある人は悪いこと言わないのでとりあえずGrothendieckというかEGAとかSGA, 柏原-Schapira, Gaitsgory, Lurie, Costello, Scholtz, 深谷賢治のように長くて深い重要な本を書く人たちの著作を追ってください。一部分でもちゃんと理解できれば研究上で大きな力となるはずです。

一つの例を挙げよう.自分はSGA4を読んだとき,強い衝撃を感じたのを覚えている.というのも,まずそれ以前に自分はSGA4は「はじめてtopos理論が導入され,それらを用いてエタールコホモロジー理論を展開したもの」という話を聞いていただけった.それだけに「そこで展開されるtopos理論はまだまだ原石で,粗削りなものだろう」という印象を勝手に抱いていた.
それが蓋を開けてみると,その完成度はすさまじいものであった.のちにLawvereやJohnstoneなどによって展開されるElementary toposや圏論的論理学との関係に関していえば”Sheaves in Geomery and Logic”や”Topos theory”の方が優れているといえるが,純粋にコホモロジー論などの数論幾何への準備としてのtopos理論は未だにSGA4が最高の本であると思う.

紙面の都合を考えれば当然 EGA や SGA の翻訳など無理筋に決まっているのだが、2018 年に Stacks Project のフレームワーク Gerby を使って EGA を英訳するプロジェクトが始まった。現在かなりの部分が快適に英語で読めるようになっており、このようなサイトが日本語で読めるようになれば代数幾何学の学びやすさは格段に向上することが間違いないだろう。

そもそも、数学徒は数学ができることが第一であって、英語やフランス語が読めるようになることは本来は二の次である。私は残念ながら数学の道を歩むことはないが、かつて代数幾何学を志そうとした者として、そして曲がりなりにも英語やフランス語の能力に長けている者として、さらに Grothendieck の著作という極めて文化的意義の大きい作品を日本語で読めるようになる価値を鑑みて、ここにグロタンディーク全訳計画の開始を宣言する。基本的に、私が死ぬまでに(つまり順調にいけば60年以上かけて)終わることを目標としている。専用のサイトを作成できるほどに訳文が蓄積するまでは、本ブログに少しずつ公開する。Tohoku と EGA 0 が終了したあたりで専用のサイトを立ち上げることを考える予定である。