空論上の砂、楼閣上の机。

The Castle of Indolence

親族関係の数学的構造

構造主義といえばクロード・レヴィ゠ストロース*1ですが、その主著『親族の基本構造』の第14章にはアンドレ・ヴェイユ(ブルバキの筆頭メンバー)が著した「いくつかの型の婚姻法則(ムルンギン型体系)をめぐる代数的研究について」という論文が収められています。このことは歴史的事実としては多くの人文学書に必ず書かれているのに対して、数学的構造の部分をちゃんと書いている文献は

しか見当たりません。河野 (2008) が具体的な研究の系譜も含めて詳しく書かれているのですが、実は私は「$\TeX$ 打ちされていない数学的記述は全て放り投げたくなる病」に罹患しているので読むのに多大な苦痛を感じました(タイプライターで書かれた数学書を読むときにも感じますが)。もしこの病気に罹っていないのであれば是非読んでみてください。ヴェイユの発見した数学的構造そのものは、群論をほんの少しでも知っていればめちゃめちゃ簡単な話です。

ところが nLab に衝撃の記事があるのを発見しました。

ncatlab.org

親族関係に群も圏もトポスも層も出てくることを考えると、やっぱりプラトンの言う通り、人類はもともと群や圏やトポスや層のイデアを元々知っていて生まれたときに忘れるのでは?(違う)

……なんで違うかというと、結局 Klein の四元群ぐらいめちゃめちゃ簡単な構造だったら日常言語で十分に語れてしまうからです。逆に日常言語は $\Z/2\Z\times\Z/2\Z$ ぐらいならササっと表現できてしまうぐらい豊かな構造を持っているのだということでもあるわけですが。圏やトポスや前層が出てくるといっても、別にお遊び程度のことしかしていないので、暇だったら読んでみる価値はあるでしょう。

*1:この「゠」はダブルハイフンという記号で、イコール「=」とは異なります。Claude Lévi-Strauss のハイフン「-」を日本語に移すときに使われます。