空論上の砂、楼閣上の机。

The Castle of Indolence

as ~ as はイコールではない!

追記

普通に CamGEL pp.1100-1101 に説明がありました……ちゃんと通読して暗記しないとダメだなぁやっぱり……

In the absence of indications to the contrary, a scalar comparison of equality is interpreted as “at least equal”, not “exactly equal”:


[3] i Jill is as clever as Liz. [Jill may be cleverer]
ii Jill isn’t as clever as Liz. [Jill must be less clever]


Example [i] is consistent with Jill being cleverer than Liz: we can say Jill’s as clever as Liz, somewhat more so in fact. Scalar equality therefore normally excludes only the relation of inferiority: it gives a lower bound. And the negative in [ii] accordingly entails inferiority, ruling out both the case where Jill and Liz are equally clever and that where Jill is cleverer. This is just as well for the practical use of the language, for while some scales (such as those involving physical size) allow precise measurement, most do not. It would normally be nonsensical to ask whether Jill is exactly as clever as Liz, for example.

The extent to which a comparison of equality is compatible with superiority will vary with the content and context: He made as many as eighteen mistakes carries a much stronger suggestion that perhaps exact equality holds, for example, than He made as many mistakes as I did.

ただ、下に引用した説明も非常に重要であるので、合わせて読んでいただくと一層理解が深まるだろう。


スタディサプリで関正生さんが担当する「トップレベル英語<文法編>」を高1のときに受けたのだが、これはなかなか良い講座だ。大西『一億人の英文法』も中1のときにひたすら読みまくってボロボロの蛍光マーカーだらけになっていた。お二人はよく英語科の講師で物議を醸しがちなのだが、個人的には上手にいいとこ取りをすれば非常に高い学習効果が得られると思う。

さて、今回は関さんが指摘する「as...as はイコールではない」という言明について検証してみよう。まず結論としては '≧' の関係であるとし、次の事実を傍証として挙げている:

  1. (無標の) not as ~ as は '≠' ではなく '<' を意味する
  2. not only A but also B ⇄ B as well as A というパラフレーズが成立するので非対称であり特に B に力点が置かれている

これを聞いて「なるほど!」と思ったのだが、どの文法書を見てもなかなか見当たらない(追記参照)。ところが

程度表現と比較構造 (新英文法選書)

程度表現と比較構造 (新英文法選書)

  • 作者:八木 孝夫
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 1987/02/01
  • メディア: 単行本
の 3.5.2 を見て完璧な記述がなされていたので感動している。以下、引用:

as ~ as は程度に関し「等しい」(=) という関係ではなく, 「以上」(≧) という関係を表す。以下にその証拠をいくつか挙げよう。


A. (135) は, もし as ~ as が程度の等しいことを表すなら, John と彼の友人すべての身長が等しいという現実には考えられない事態を指すことになる。実際には (135) が意味するのは, 「John は背の高さでは友人の誰にも負けない」ということである。 (Horn 1972, p. 41)


(135) John is as tall as any of his friends.

(136) で and の前後が矛盾しないのも, as ~ as が '≧' の関係を表すためである('I' は定年間近の郵便収集係)。


(136) ..., but I can still get round the boxes as quick as any of them and quicker than most.
(ポストを回る早さじゃまだ仲間の誰にも負けないし, たいていの者よりは早いぐらいだ。)

B. as ~ as が表す '≧' の関係の内, '=' の関係を打ち消すか (137), '>' の関係が可能であることを明示することができる (138)。


(137) a. John has as much money as Fred; in fact he has more/*less. —Smith 1974, p. 36.

b. Not only is John as tall as Bill, he's (even) taller. —Horn 1972, p. 42.

(138) John is as tall as, if not taller than, Bill. —ibid.


C. as ~ as の否定は '≧' の否定ゆえ, '<' の関係を表す。John is not as old as Mary は, John が Mary より年下であることを意味し,「年上か年下のいずれか」という意味ではない。(最初の as に強勢を置いた場合は特殊否定 (p. 78) ゆえ, John is not as old as Mary; he is much older も可。)


(139) Is John as old as Mary?—

{Yes, in fact he is two years older.

{No, he is two years younger.


D. XとYの間の対称的 (symmetric) な関係を表す述語は, 普通 [X and Y] を主語にした構文に用いることができる (140)。 as ~ as は '≧' という反対称的 (antisymmetric) な関係を表すためそれができない (141) (Huddleston 1971, p. 263)。

(140) John and Bill met {resemble each other.
{met (each other).
{are equally bright.
(141) *John and Bill are as bright. [John is as bright as Bill の意で]


以上の事実から, as ~ as が程度に関し「以上」を意味することは明らかだが, 一方において, as ~ as が普通は同じ個度を表すものと解釈されるのも事実である。これはなぜかと言えば, 会話の含意 (p. 65) により '≧' の関係の内 '>' の関係が成立しないものと理解されて, '=' の関係が残るためである。たとえば, もし John が Bill より年上で話者がそれを知っているならば, 初めから単刀直入に John is older than Bill と言うはずであり, John is as old as Bill というあいまいなことは言わないはずである。逆に言うと, John is as old as Bill という発話からは, 普通 John is not older than Bill が諒解されることになる。

as ~ asを用いて '=' の関係を表すには, exactly や just をつける。(ただし Bolinger (1972, p. 28) は, (143 a) を可とし, just だけでは弱いので no more をつける必要があると言う。)


(142) John is exactly as tall as Bill.
(143) a. John is just as tall {as you are, maybe taller.
b. {as you are, no more.

特に「会話の含意」のくだりが本質的であろう。もちろん普段話すときはイコールだと思って大体構わないのだが、特にイディオムや構文を覚える際に「以上なんだな」と理解しておくだけでもかなりの負担軽減につながる。辞書や文法書でもこういった記述が増えることを心より願っております。