空論上の砂、楼閣上の机。

The Castle of Indolence

Galois 理論による対称式の基本定理の証明

対称式の基本定理を証明する方法として「単項式の指数の組に辞書式順序を入れて次数を下げていく」が有名ですが, 実は Galois 理論を用いて見通しよく証明できます. このことは日本語のウェブサイトでは (探した限り) どこにも書かれていなかったので, K会. (2018). 『Galois理論』. 河合塾. に沿って紹介します.

証明. $K(X_1,\dots,X_n)$ を $n$ 変数有理関数体とし, $s_1,\dots,s_n$ を $X_1,\dots,X_n$ の基本対称式, すなわち $s_k=\sum_{i _ 1 < \cdots < i _ k} X _ {i_1}\cdots X _ {i_k}$ とする.
$K(s_1,\dots,s_n)$ の元 $f(T) = T ^ n - s _ 1 T ^ {n - 1} + s _ 2 T ^ {n - 2} - \cdots + (-1) ^ n s _ n$ は $K(X_1,\dots,X_n)[T]$ において $f(T)=\prod _ {i=1} ^ {n} (T-X_i)$ となるので $K(X_1,\dots,X_n)/K(s_1,\dots,s_n)$ は Galois 拡大. $G$ をその Galois 群とする.
$G\cong\operatorname{Aut}\lbrace X_1,\dots,X_n \rbrace\cong S_n$ を示す. $f(T)$ の係数はすべて $K(s_1,\dots,s_n)$ の元なので, $G$ の元 $\sigma$ は $f$ の根 $\lbrace X_1,\dots,X_n \rbrace$ の置換を引き起こし, 自然な群準同型 $G\to\operatorname{Aut}\lbrace X_1,\dots,X_n\rbrace$ が得られる. 一方, また, $\lbrace X_1,\dots,X_n \rbrace$ の置換 $\sigma\colon X_i\mapsto\sigma(X_i)$ により $K(X_1,\dots,X_n)$ の $K$ 自己同型が誘導される. これは $K(s_1,\dots,s_n)$ を不変にするので, 群準同型 $\operatorname{Aut}\lbrace X_1,\dots,X_n \rbrace\to G$ が得られる. これらの写像は互いに逆を与えるので示された.
よって, $K(X _ 1, \dots, X _ n) ^ G = K(X_1,\dots,X_n) ^ {S _ n} =K(s_1,\dots,s_n)$ より $\lbrace X_1,\dots,X_n \rbrace$ の置換によって不変な有理式は $s_1,\dots,s_n$ の $K$ 係数有理式で表せる.