空論上の砂、楼閣上の机。

The Castle of Indolence

【読書録】『多体系と量子場』

岩波講座 物理の世界 量子力学〈5〉多体系と量子場

岩波講座 物理の世界 量子力学〈5〉多体系と量子場

というわけで読んでみましたが, ページをめくるごとに涙が止まらない作品でした. 感動の一作. 新井朝雄先生のご著書はどれも外れがないことで有名ですが, これはもう本当にヤバい. エモさがヤバい.

どのようにエモいのか説明しなければならない. まずこの本は「量子論的な多体系」を研究しなければならないというモチベーションから始まります. そこで出てくるのが不可弁別性の原理:「同種の粒子どうしは互いに区別できない」という原理です. すると本当に簡単な議論から粒子の統計性:「同種の粒子の $n$ 粒子系の状態を表す関数は対称であるか反対称であるかのどちらかでなければならない」が導かれちゃう......マジか??? で, そうすれば $n\,(\geqq2)$ 粒子系の任意の状態を, 対称な関数で表せる粒子をボソン, 反対称ならフェルミオンとよぶ......そういうことだったのか......その後はボソン側でボース・アインシュタイン凝縮, フェルミオン側でパウリの排他律を説明して見事に第1章のフィナーレ......悪魔的演出......特にパウリの排他律って化学とかでも出てくるのでかなり感動しました.

あとはそれぞれの量子場について議論をしている. ボソン側はボソンフォック空間を(本当に自然に)定義したあと, 生成演算子・消滅演算子を説明したあとに, ボース場と, ボース場に同伴する粒子がボソンであることを示しています. あとはちょこちょこ重要な例を述べて終わり. フェルミオン側もほぼ同じ. つまりこの本は全3章が「すべて必然性を持って存在している」わけです. 論理がキレイすぎる.

ちなみに最後に線形代数的な補足があります. まあいつもどおりなんですが, こんな言葉がありました.

本書を通読する上ではヒルベルト空間の細かい定義を知る必要はなく, 次に述べる事実だけをおさえておけばよい. すなわち, 内積空間は完備化という手続きにより, つねにヒルベルト空間に拡大できる. したがって, 内積空間はヒルベルト空間の部分空間と考えてよい.

こういうセリフをちゃんとバシッと言えるのが数理物理学の新井先生だからこそかなと思ってしまった.

とにかく, 本当にいい本です. ちなみに今は絶版らしいので図書館で見つけましょう.