数学

1980年 東大文系数学 第3問の自然な別解

1980年 東大文系 第3問 $n$, $a$, $b$, $c$, $d$ は $0$ または正の整数であって, $$ \left\{\begin{array}{l} a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2}=n^{2}-6 \\ a+b+c+d \leqq n \\ a \geqq b \geqq c \geqq d \end{array}\right. $$ を満たすものとする. このような数…

多角形の自由度

数理哲人氏という方が学びエイドで「数理哲人の闘う数学【特別講座】戦後の東大」というマニアックな講座を開講なさっているのですが、そこで扱われていた次の問題がどうにも分からず一度挫折してしまいました。 1946年 帝大 工学部 第1問 同一平面上にある…

Cavalieri の原理 (トントン) で積分論を使わずに直交する円柱の共通部分の体積を求める

定理1. (Cavalieri の原理) $A$, $B$ を平面・空間上の図形, $l$ を直線とする. $l$ に垂直な直線・平面が $A$, $B$ によって切り取られる長さ・面積の比が常に $a\colon b$ ならば, $A$, $B$ の面積・体積比は $a\colon b$ である. Cavalieri の原理を適用…

整数の離散性

整数は幅 $1$ で均一に分布し, それを整数の離散性という……何を今更当たり前のことを, と思うかもしれません. 問題. (1991年 東大理系 第5問) $xy$ 平面上, $x$ 座標、$y$ 座標がともに整数であるような点 $(m,n)$ を格子点とよぶ. 各格子点を中心として半径…

線形漸化式の一般解

数列 $\lbrace p_n \rbrace$, $\lbrace q_n \rbrace$ に対し $$a _ {n+1}=p_n a_n+q_n$$ を線形漸化式というとき, 数列 $\lbrace a_n \rbrace$ の一般項を求めてみたい. ここで $p_n=0$ となる $n$ があれば, それは初項 $q_n$ の線形漸化式とみなせるので任…

ノミネート法

注意書き 清史弘 (2003) を読み終えたのですが, 解の配置は割と多くの参考書でも確立されているようなことが多かったのに対し, 2.4 「ノミネート方式」についてはネット上でも情報がほぼ見当たらない上に, 現在出版されている 清史弘 (2016) の p. 114 にし…

解の配置問題 集大成 〜なぜ判別式・グラフの軸・両端の値を考えるのか〜

はじめに $2$ 次関数 舞台設定 武器 解の公式 解と係数の関係 パラメータ分離 (定数分離) 一般論 $0$ 個 $1$ 個 開区間 閉区間 $2$ 個 開区間 閉区間 重複度含め $2$ 個 少なくとも $1$ 個 開区間 閉区間 $3$ 次関数 演習問題 参考文献 はじめに 解の配置問…

なぜ 1 は素数ではないのか?:too simple to be simple

多くの定義では素数を「$1$ より大きい正の整数のうち正の約数が $1$ と自分自身のみであるもの」としますが, いくつか最近思うところがあったのでメモしておきます. “up to 同伴” で同一視するんだからプラマイ含めて素数でいいじゃないか ($\pm2, \pm3,\do…

なぜ弧度法は well-defined なのか?

数Ⅱの三角関数に入るといきなり「弧度法」という謎のシステムを理解しなければ三角関数の単元自体に全くついていけず数Ⅲの微積分では大惨事になるというのはよく知られていることです. しかし大抵の場合は「$180^{\circ}$ を $\pi$ としなさい」という本当に…

n! が平方数になることはあるのか?

補題1. (Bertrand の仮説) 任意の自然数 $n$ に対して, $n 命題2. $n!$ が平方数となるための必要十分条件は $n=0,1$ である. 証明. 十分性は明らか. $n \geq 2$ のとき $n!$ は素因数を少なくとも $1$ つもつので, 最大の素因数 $p$ を取ってこれる. $n!$ …

ベクトル裏ワザ集

高1のときに同級生向けに作ったプリントを発掘したので記念にブログに直しておきます. 表現は原文ママなので甘い目で見てください. あまり知らない人がやるとヤケドします. ご利用は計画的に. $\overrightarrow{a}=\left(\begin{array}{c}1\\3\\2\end{array}…

Galois 理論による対称式の基本定理の証明

対称式の基本定理を証明する方法として「単項式の指数の組に辞書式順序を入れて次数を下げていく」が有名ですが, 実は Galois 理論を用いて見通しよく証明できます. このことは日本語のウェブサイトでは (探した限り) どこにも書かれていなかったので, K会. …

Weyl の一様分布定理と Benford の法則

Arnol'd (1989) には次のような問題が載っています: Consider the first digits of the numbers $2 ^ n$: $1,2,4,8,1,3,6,1,2,5,1,2,4,\dots$. Does the digit $7$ appear in this sequence? Which digit appears more often, $7$ or $8$? How many times mo…

有向角を用いたミケルの定理の証明

Miquel の定理は点の位置による場合分けが非常に煩雑なので一般的には省略して証明されますが, 有向角を導入することで統一的に示すことができます. 発想自体は Chen (2016) の第1章に基づいておりますが, 定義が曖昧だったり証明のコーナーケースが埋められ…

位相空間論による素数の無限性証明

素数が無限個存在することは良く知られていますが, 1955年に Hillel Furstenberg が学部生のときに提出した位相空間論を用いた証明は教育的でありながら興味深いものとなっております. 何が興味深いかといいますと, まさにエラトステネスの篩をイメージした…

群論としてのIMO2019第4問

問題1. (IMO2019第4問) 以下をみたす正の整数の組 $(k,n)$ をすべて求めよ: $$ k! = (2^n-1)(2^n-2)(2^n-4)\cdots(2^n-2^{n-1}).$$ 命題2. $q$ を素べきとする.$$ \vert \operatorname{GL} _ {n}({\mathbb {F}} _ {q})\vert =\prod _ {{k=1}} ^ {n}(q ^ {n}-…

確率・統計 §2. 確率空間

そろそろ高校範囲を超えた記号がガンガン出てくるようになります. 馴染みのある確率空間に入るまでのエグさもしんどさも激しいのですが, ここで躓くと確率の基本的性質が何も示せなくなります. まずは前回の復習から始めましょう. H6 お茶大 8 $\Omega$ を任…

確率・統計 §1. イントロダクション

注意 数学研究部で統計をやろうかどうか迷っているので講義録を書いてみようと思いました. ところがTeXファイルでひたすらガーッと書きまくって完成してしまうような若い時代はもう終わってしまいました. 完全に耄碌してしまいました. ですから, ブログにち…

中国剰余定理

3世紀から5世紀にかけて成立したと言われている中国の算術書『孫子算経』に ある物を $3$ つずつ数えると $2$ つ余り, $5$ つずつ数えると $3$ 余り, $7$ つずつ数えると $2$ 余るとき, 物の個数はいくらか. という問題があり, 解答は $3$ で割ると $2$ 余る…