空論上の砂、楼閣上の机。

The Castle of Indolence

数学

空集合は何次元の多様体か?

前にこんな記事を書きましたが, 空集合を位相空間に含める流儀を取るとき, それは何次元の多様体になるのでしょうか? www.all-for-nothing.com 微分構造は本質的でないので, ここでは位相多様体だけ議論すれば十分です. 自然数を $0$ 以上の整数とします. …

空集合は位相空間か?

位相空間論といえばブルバキですが、その定義は次のようなものです。 DÉFINITION 1. On appelle structure topologique (ou plus brièvement topologie) sur un ensemble $X$ une structure constituée par la donnée d’un ensemble $\mathfrak{O}$ de parti…

親族関係の数学的構造

構造主義といえばクロード・レヴィ゠ストロース*1ですが、その主著『親族の基本構造』の第14章にはアンドレ・ヴェイユ(ブルバキの筆頭メンバー)が著した「いくつかの型の婚姻法則(ムルンギン型体系)をめぐる代数的研究について」という論文が収められて…

Fermat の最終定理の同値な表現

Fermat は Diophantus『算術』の問2-8「平方数を二つの平方数に分けよ」に対して次のような注釈を与えました。 原文 (1670) これは中世ラテン語なので少し読みにくいのですが、文字に起こすと次の通りです。 Cvbum autem in duos cubos, aut quadratoquadrat…

偽金貨問題とエントロピー

問題. (偽金貨問題) $N$ 枚の金貨のうち $1$ 枚が重さの異なる偽物である. 天秤を何回使えば判別可能か? $n$ 枚目の金貨が重いという結果を $n _ +$, 軽いという結果を $n _ -$, 等しいという結果を $0$ と表すとき, 確率空間は $\Omega=\lbrace 0,1 _ +,1 …

メネラウス・チェバの定理の逆は成り立たない?

舞台設定 線分 $AB$ の長さを $\overline{AB}$ と書きます. 点 $A_1,\dots,A_n$ が一直線上にあることを, $A_1,\dots,A_n$ が共線であると言います. 直線 $l_1,\dots,l_n$ が一点で交わることを, $l_1,\dots,l_n$ が共点であると言います. 点 $P$, $Q$, $R$ …

接点の個数と接線の本数について

よく数Ⅱの $3$ 次関数で「接点の個数と接線の本数が一致するから……」という “おまじない” を書くことが多いと思いますが、それと同時に $4$ 次関数などでは一般に成り立たないということもよく注意されていると思います。それは相異なる $2$ つ以上の点で接…

Basel 問題

問題1. (1990年 東工大後期 第2問) $n$ を $2$ 以上の整数とする. (1) $n-1$ 次多項式 $P_n(x)$ と $n$ 次多項式 $Q_n(x)$ ですべての実数 $\theta$ に対して $$\begin{aligned} \sin(2n\theta)&=n\sin(2\theta)P_n(\sin^2\theta),\\ \cos(2n\theta)&=Q_n(\s…

望遠鏡和による (等差)×(等比) 型数列の和の導出

数列 $\lbrace (ak+b)r ^ k\rbrace$ (ただし $r\neq1$ とする) の和 $$S _ n=\sum _ {k=1} ^ n(ak+b)r ^ k$$ を求めることをよく考える機会があります. 一般的には「公比を掛けて差を取る」という方法が紹介されていますが, これは添字の管理が非常に (特に…

まだロピタルの定理で消耗してるの?

メモを整理していたら, 大昔に友人に $$\lim _ {x\to0}\frac{x-\sin{x}}{x ^ 3}$$ を l’Hôpital の定理を使わずに教えてくれと聞かれたことをふと思い出しました. 当時の自分は次の画像を作って送ったようです. こんなパズルみたいな計算は嫌なので l’Hôpita…

受験数学における束 (pencil) について

束 (pencil) とは射影幾何学に由来する概念であり, もともとは Desargues の用いた ordonnance に端を発していますが, 代数幾何学における 1 次元の線形系も線形束 (linear pencil) と呼ばれています. ここではそのような射影幾何的・代数幾何的な背景には立…

Feynman の微分法 +α

Feynman は複雑な関数を微分する際に対数微分法を応用した手法を考案しました. 本稿では少しの改善を加えて具体例とともに Feynman の微分法を紹介します.

2次方程式の解の公式と対称性

$2$ 次方程式 $ax ^ 2+bx+c=0$ の解を求める際は一般的に平方完成をするのですが, これは些かテクニカルなきらいがあり, なぜそのような発想になるのかが一見すると自明ではありません. しかしながら, この方程式を解くことは実はある種の対称性と関係してお…

極座標における回転体の体積

問題1. (2012年慶医第4問・一部省略) (1) $0\leqq\alpha<\beta\leqq\dfrac{\pi}{2}$ かつ $R>0$ とする. 極座標 $(r,\theta)$ に関する条件 $$0\leqq r\leqq R,\ \alpha\leqq\theta\leqq\beta$$ により定まる図形を $x$ 軸のまわりに回転させて得られる立体…

Markov 兄弟の不等式

定理1. (Markov 兄弟の不等式) $\lVert f\rVert\coloneqq\displaystyle\max_{-1\leqq x\leqq1}|f(x)|$ と定め, $p$ を $n$ 次以下の多項式, $T_n(x)$ を第一種 Chebyshev 多項式とすると, $$\lVert p^{(k)}\rVert\leqq\lVert T_n^{(k)}\rVert\lVert p\rVert$…

ダイアモンドの二項演算 (AMC 10A 2016 #23・USA TSTST 2019-1)

問題1. (AMC 10A 2016 #23) A binary operation $\operatorname{\diamondsuit}$ has the properties that $a\operatorname{\diamondsuit}(b\operatorname{\diamondsuit}c) = (a\operatorname{\diamondsuit}b)\cdot c$ and that $a\operatorname{\diamondsuit…

Lagrange 補間

問題1. (1961年 東大文理共通 第2問) $x$ の四次式 $f(x)$ において $$\begin{aligned} f(-0.2)&=2.226\\ f(-0.1)&=2.460\\ f(0)&=2.718\\ f(0.1)&=3.004\\ f(0.2)&=3.320 \end{aligned}$$ であるとき, $f'(0)$ を求めよ. もちろん $f(x)=ax ^ 4+bx ^ 3+cx ^…

対称式の小ネタ

有理数 $a,b,c$ に対し, $a+b+c, 2(ab+bc+ca), 3abc$ が整数であったならば, $a,b,c$ は整数となることを示せ. $\alpha=a+b+c, \beta=2(ab+bc+ca), \gamma=3abc$ とおく. 方程式 $6(x-a)(x-b)(x-c)=6x ^ 3-6\alpha x ^ 2+3\beta x-2\gamma=0$ の解 $a,b,c$ …

数列の和から一般項を求めるときの場合分け

数列 ${a_n}$ の初項から第 $n$ 項までの和を $S_n$ とするとき, 次の等式が成り立つ. $$a _ n=\begin{cases} S _ n-S _ {n-1} & (n \geq 2)\\ S _ 1 & (n=1) \end{cases}$$ 数列 $a_n$ の初項から第 $n$ 項までの和 $S _ n$ が $S _ n=2 ^ n$ であるとき, …

軸の直交する放物線が4点で交わるなら共円

直交する放物線の軸が $x$ 軸, $y$ 軸に平行になるように座標軸を設定すると, 放物線の方程式は $py=x ^ 2+ax+b,$ $qx=y ^ 2+cy+d$ と表される. 共有点を $4$ つ持っているので, $$Q = \dfrac{ (q-a) ^ 2}{4} + \dfrac{ (p-c) ^ 2}{4} - b - d$$ とおくと, $…

1980年 東大文系数学 第3問の自然な別解

1980年 東大文系 第3問 $n$, $a$, $b$, $c$, $d$ は $0$ または正の整数であって, $$ \left\{\begin{array}{l} a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2}=n^{2}-6 \\ a+b+c+d \leqq n \\ a \geqq b \geqq c \geqq d \end{array}\right. $$ を満たすものとする. このような数…

多角形の自由度

数理哲人氏という方が学びエイドで「数理哲人の闘う数学【特別講座】戦後の東大」というマニアックな講座を開講なさっているのですが、そこで扱われていた次の問題がどうにも分からず一度挫折してしまいました。 1946年 帝大 工学部 第1問 同一平面上にある…

Cavalieri の原理 (トントン) で積分論を使わずに直交する円柱の共通部分の体積を求める

定理1. (Cavalieri の原理) $A$, $B$ を平面・空間上の図形, $l$ を直線とする. $l$ に垂直な直線・平面が $A$, $B$ によって切り取られる長さ・面積の比が常に $a\colon b$ ならば, $A$, $B$ の面積・体積比は $a\colon b$ である. Cavalieri の原理を適用…

整数の離散性

整数は幅 $1$ で均一に分布し, それを整数の離散性という……何を今更当たり前のことを, と思うかもしれません. 問題. (1991年 東大理系 第5問) $xy$ 平面上, $x$ 座標、$y$ 座標がともに整数であるような点 $(m,n)$ を格子点とよぶ. 各格子点を中心として半径…

線形漸化式の一般解

数列 $\lbrace p_n \rbrace$, $\lbrace q_n \rbrace$ に対し $$a _ {n+1}=p_n a_n+q_n$$ を線形漸化式というとき, 数列 $\lbrace a_n \rbrace$ の一般項を求めてみたい. ここで $p_n=0$ となる $n$ があれば, それは初項 $q_n$ の線形漸化式とみなせるので任…

ノミネート法

注意書き 清史弘 (2003) を読み終えたのですが, 解の配置は割と多くの参考書でも確立されているようなことが多かったのに対し, 2.4 「ノミネート方式」についてはネット上でも情報がほぼ見当たらない上に, 現在出版されている 清史弘 (2016) の p. 114 にし…

解の配置問題 集大成 〜なぜ判別式・グラフの軸・両端の値を考えるのか〜

はじめに $2$ 次関数 舞台設定 武器 解の公式 解と係数の関係 パラメータ分離 (定数分離) 一般論 $0$ 個 $1$ 個 開区間 閉区間 $2$ 個 開区間 閉区間 重複度含め $2$ 個 少なくとも $1$ 個 開区間 閉区間 $3$ 次関数 演習問題 参考文献 はじめに 解の配置問…

なぜ 1 は素数ではないのか?:too simple to be simple

多くの定義では素数を「$1$ より大きい正の整数のうち正の約数が $1$ と自分自身のみであるもの」としますが, いくつか最近思うところがあったのでメモしておきます. “up to 同伴” で同一視するんだからプラマイ含めて素数でいいじゃないか ($\pm2, \pm3,\do…

なぜ弧度法は well-defined なのか?

数Ⅱの三角関数に入るといきなり「弧度法」という謎のシステムを理解しなければ三角関数の単元自体に全くついていけず数Ⅲの微積分では大惨事になるというのはよく知られていることです. しかし大抵の場合は「$180^{\circ}$ を $\pi$ としなさい」という本当に…

n! が平方数になることはあるのか?

補題1. (Bertrand の仮説) 任意の自然数 $n$ に対して, $n 命題2. $n!$ が平方数となるための必要十分条件は $n=0,1$ である. 証明. 十分性は明らか. $n \geq 2$ のとき $n!$ は素因数を少なくとも $1$ つもつので, 最大の素因数 $p$ を取ってこれる. $n!$ …